2024年08月9日
デザイナーへ発注したけれど、思い通りのデザインにならない。何度フィードバックしても納得できるデザインに近づかない。という経験をしたことはありませんか?その原因の多くは、コミュニケーション不足によるもの。思い通りのデザインを作るためには、デザイナーへの理解を深めることが大切になります。とはいっても、仕事の関係で理解を深めるのは難しいですよね。
そこで、デザイン制作会社を運営する弊社が、デザイナーはどんなことを考えながらデザインをしているのか、そのプロセスと押さえておくべきポイントをお伝えします。
アーティストとデザイナーの違いをご存知でしょうか。どちらもクリエイティブを追求している点では共通していますが、両者の活動目的は大きく異なっています。それぞれの違いを知り、理解を深めていきましょう。
アーティストは、主に自己表現や思想の喚起を目的としています。時間や予算などの外部からの条件はなく、表現方法も自由に選択することができます。
デザイナーは、クライアントの課題解決や目標達成を目的としています。クライアントの存在が前提としてあるので、時間や予算、アウトプット方法などさまざまな条件の中で制作していきます。
解釈はさまざまですが、弊社は<デザイン>とは<課題解決ツール>の一つであり、そのツールを有効的に使うことができる人を<デザイナー>と呼ぶと考えています。
デザイナーはデザインを通して問題解決することを目的にしています。では、クライアントからの依頼を受けて、デザイナーがどのように問題解決に向けたデザイン制作を行うのか、デザイナーの頭の中を覗いてみましょう。
まずはクライアントの課題を知り、目指したい目的や目標を共有します。この部分が曖昧だと、訴求力の弱いデザインになってしまうため、クライアントの想いを深掘りして聞いていきます。この段階ではまだまだデザインは作れません。ここから方向性を絞っていきます。
デザインの方向性を決める軸となるのは、クライアントの想いです。多くのデザイナーは、クライアントの言葉の中にこそ、想いにつながる重要なキーワードが隠されていると考えています。つまり、デザイナーにとってクライアントと直接話ができる機会は、キーワード探しのチャンスです。話し合いの中で見つけたキーワードからデザインを作るとどうなるか、有効的に落とし込むアイデアはあるかと考えていきます。
デザインの方向性が決まれば、次はアイデア出しです。デザイナーの頭の中では、デザインの引き出しを引っ張りあれやこれやと考えていく段階です。もしゴールとするイメージがあるならば、共有しておきましょう。イメージ画はWebサイトの切り抜き、動画のスクショ、手書きのラフ画など何でもいいのですが、一枚だけだとパクリになってしまう可能性があるので、複数枚共有することが理想です。その画のどこが良いのか、どの部分を参考にしたいのかを伝えておくと、デザイナーの頭の中でイメージが絞られ、深度の深いアイデアを考えやすくなります。
例えば「猫」と言葉で伝えた場合、概要は伝わりますが、その猫が何色か、太っているのか、歩いているのか、首輪はついているのか、という状態を追加で説明する必要があります。これを画像で見せた場合、その黒猫がどのような状態なのか一目で認識できます。これがイメージ画を共有するメリットです。
ここからは、実際にデザイナーが手を動かしてデザインを制作していきます。経験豊富なデザイナーでも、発注後すぐにデザインできるわけではありません。ベースとなるデザインを作り、そこから時間をかけてブラッシュアップしていきます。同じデザインを見続けていると、改善点や違和感に気付きにくくなってしまうため、意図的に時間を置いてブラッシュアップを繰り返したり、複数人で修正点を出し合いながら進めたりしながら制作していきます。経験の多寡に関わらず、デザイン制作はある程度の時間が必要なので、余裕のあるスケジュールを設定しておきましょう。
デザインを制作するうえで、デザイナーが知りたいことはどんなことでしょうか。ビジネスとして外せないことも含まれているので、発注後の思わぬトラブルを防ぐためにも、以下の項目をチェックしていきましょう。
デザインを制作することによってどんな課題を解決したいのか、それによってどんな効果をもたらしたいのか、という点を必ず伝えましょう。ここが明確でないと、出来上がるデザインが納得のいかないものになってしまう可能性があります。
具体的なデザインに落とし込むためにも、ターゲットとなる顧客像を決めましょう。詳細を絞れば絞るだけ、刺さりやすいデザインを制作することができます。もしターゲットを絞らず万人受けを狙ってしまうと、誰にも刺さらないどこかで見たことがあるデザインになってしまいます。
もしゴールとする完成イメージがあるならば、発注の際に共有しましょう。ゴールの共有ができていると、制作途中で迷いが生じた際の修正指標になり、完成までスムーズに進むことができます。
見落としがちなのがガイドラインです。企業ロゴはもちろんのこと、企業ごとに独自のレギュレーションが決まっていることは少なくありません。ガイドラインがある場合は、制作する前に必ずデザイナーに共有しましょう。
作業と納品のスケジュールを伝えましょう。経験豊富なベテランデザイナーは制作期間が短くても大丈夫、なんてことはありません。デザインは時間をかけてブラッシュアップしていくものです。発注の時点で納品までの時間が短いということがないように、余裕をもったスケジュールを組んでおきましょう。
ビジネスとして大切なことですが、予算は最初に伝えましょう。デザイン業界は明確な価格がなく、会社規模や制作する量によって金額は大きく変動します。どれくらいの予算感で考えているか、ということだけでも伝えておくと請求時のトラブルを避けることができます。
デザイナーからあがってきたデザインが初稿で納品となることは珍しく、何度も修正を繰り返しながらゴールへと近づけていくのが一般的です。より良いデザインにするために、気をつけるポイントを見ていきましょう。
打ち合わせを入念にしても、あがってきたデザインが何か違う、と感じることはよくあることです。その場合は、フィードバックをしていきましょう。ここで大切なことは、修正箇所はまとめて伝えることです。デザインには全体のトンマナがあるため、細かく何度も修正を入れていると全体のトンマナが合わなくなり、全体を修正し直すという事態にもなりかねません。さらには、修正連絡のやり取りに時間がかかってしまい、納期のリミットに間に合わない可能性も出てきます。余裕を持ってプラッシュアップするためにも、修正点はまとめて伝えましょう。
デザインの完成まで連絡を取り続けるようにしましょう。発注後はデザイナーにすべてお任せしたい、という方もいるかもしれませんが、デザインの方向性で迷った時には連絡が取れるようにしておくことが理想です。細かく確認を取れる状況を作っておくことで、コミュニケーション不足による大きな軌道修正を避けることができます。
また、あなたの他に担当者が複数いる場合は、メインの担当者を一人決めておきましょう。複数人が同時に連絡をすると伝え漏れや思い違いが起こる可能性が高くなるので、メイン担当者がやり取りすることをオススメします。
思い通りのデザインにならないと感じたら、どこをどうして欲しいのかをきちんと伝えることが必要です。日頃からデザイナーの考え方や癖を把握しておくと、デザインの意図を捉えやすくなりフィードバックを伝えやすくなります。
また、軸となる課題や目的からずれていないかと確認しながら、軌道修正を繰り返していきましょう。
デザイナーは、あなたの課題を解決してくれる心強い味方です。発注をしたらすべてお任せにするのではなく、デザイン完成まで二人三脚で進んでいきましょう。イメージ画を探しているところから、いいえ、課題や目的を考えているところから、すでに<デザイン制作>は始まっていますよ。